【 第3回 人が集まる会社 】株式会社バーテックの場合

働き方改革プロジェクトによる「物心両面の幸福の追求」

共働き家庭が増加し、男性の育児参加を求める声が増えています。とはいえ、厚生労働省のデータによると2016年度の男性の育児休業取得率は3.16%と、女性の育児休業取得率の81.8%に比べると、まだまだ非常に低い水準です。

そんな中、工業用ブラシを主力とする株式会社バーテック(大阪市都島区)は、「全従業員の物心両面の幸福の追求」という理念の実現を目指し、2015年より働き方改革プロジェクトを始動。その一環として、2016年5月に男性で初めての育児休業・在宅勤務を実現されました。新たな試みに取り組む事で、気づいたこと。また、その後会社に与えた影響など。実際に育児休業・在宅勤務制度を利用された、新井健一郎さん(39)にお話を伺ってきました。

― 現在入社15年目の新井さん。普段はどんなお仕事をされているのですか?

『株式会社バーテックは工業用のブラシの設計開発・製造・販売をする会社で、私は海外営業部に所属しています。主な業務内容は、海外からの受注商品の出荷準備、海外PR用のサンプル品の手配や海外での展示会の準備や打ち合わせ、カタログ作成などです。』

― 新井さんは、ドイツ人の奥様とお二人のお子様の4人家族。二人目のお子様が生まれた時に約1か月間の育児休業・在宅勤務を利用されたそうですね。海外営業部という事は、海外出張もあると思うのですが、具体的にはどのようなお休みだったのですか?

『社長の勧めもあり、海外出張がない時期に、育児休業と在宅勤務制度を併用させてもらいました。1ヶ月間、完全に休むのではなく、週に1回は出社をし、それ以外は自宅で1日1時間~2時間はメールチェックや電話対応、事務作業をする。そして、それ以外の時間は育児と家事を手伝うというような1ヶ月でした。』

― 社長からの提案なんですね。1ヶ月完全に休むのではなく、出社日と在宅ワークの時間を上手く組み合わせる事で、育休を取る事へのハードルが低くなりますね。育休を取ると決まった時の新井さんの心境や、ご家族の反応はどうでしたか?

『男性でも育休制度が使えるんだ!というのが正直な感想でしたね。女性が育休を取るイメージはあったのですが、男性が育休を取るというイメージは全くなかったです。なので妻も驚いていました。後は、育児や家事を手伝ってもらえるので喜んでいましたね。』

― 育児と家事に取り組まれた1か月間は、どんな1か月でしたか?

『在宅での仕事と、「育児や家事」という仕事。2倍仕事をしていたという感覚でした(笑)主に、毎日の食事の準備と、掃除・洗濯・上の子供の送迎を担当していました。毎日の食事の準備が何よりも大変でしたね。一週間同じメニューが続く事もありました。』

― 普段はしない育児・家事をされて、その大変さに気づかれたという事ですね。

『そうですね。育児・家事をしていると1日があっという間に過ぎていきました。そして、意外と自由な時間がない事に気づきましたね。正直、今までは仕事をしている自分の方が大変だと思っていたのですが、そうではないと反省しました。育児・家事は、協力してやる事が大事なんだと思えました。』

― 家事と育児の責任者は「夫」と「妻」の両方だという事ですね。そして、夫婦お互いが協力して家事や育児に参加し、苦労も喜びも共有する。そうする事で、夫婦間の絆は、より深まるのだと思います。この1か月間、ご家族で過ごされる時間が増えた事で、奥様やお子様はどのような反応でしたか?

『妻からは、家事や育児を手伝ったことに、本当に感謝をされました。今までほとんど関ることのなかった家事に参加する事で、自分自身もその大変さを理解し、少しでも家事の負担が減るように、食洗機の活用や洗濯の簡易化をするように工夫をしました。また、通常の生活に戻った今も以前より家事を手伝うようになりましたね。』

『そして、子供の成長が感じられたという意味でも、本当に貴重な1ヶ月でした。普段は、仕事が終わって帰った頃には、子供はすでに寝ています。この1か月間、幼稚園が終わった後、平日の昼間から公園で父親と遊べるのを、上の子は本当に喜んでいました。』

― ご家族にとっても、貴重な育休だったという事ですね。育休を終えて、奥様は何と仰っておられましたか?

『仕事や会社の事をよく理解してくれるようになりました。ドイツでも、男性が育休制度を取ることは比較的少ないため、今回育休を取らせてもらえた事で、妻としても本当に助かったようです。』

― 夫が家事育児を経験し妻への理解が深まると、妻の仕事への理解も深まるのかもしれませんね。今回の育休を終えて、新井さん自身の働き方や仕事への取組みなどで変わったことはありますか?

『就業時間が決まっている仕事とは違い、育児や家事は時間が決められていません。また、育児や家事の合間の限られた時間で仕事をこなす事で、「勤務時間を働く事」が仕事ではなく、「やるべき事をやりきる事」「目標を達成する事」が仕事であるという意識へ変わりました。つまり、与えられた仕事をこなすのではなく、成果や結果を出すことが本当の仕事だと思います。なので、勤務時間外であっても、結果を出すためにやるべきことはやる、という責任感が強くなったと思います。』

― 時間を問わず育児・家事をこなす事で、「時間という枠にとらわれず結果にこだわる」という事を意識されるようになったのですね。新井さんが育休を取ったことにより、他の社員へ与えた影響は大きいと思います。他の社員の方も新井さんに続いて育休を取って欲しいですね。

『そうですね。一人が育休を取れば、その人は他の人が育休を取る時にフォローする立場になります。その次の人がまた他の人をフォローし合う。そんな環境が大事だと思います。また、育児・家事を経験する事で、育児・家事に対する意識が大きく変わります。まさに、「育休」ではなく「育児修行」という言葉がピッタリです。その一人一人の人生の経験を会社に持ち帰ることが、会社の成長にも繋がると思うので、男性にも育児にどんどん携わってほしいですね。』

― まだまだ、世間では男性の育休の取得率は、女性に比べると低いですが、男性が育休を取るのはやはり難しいと思いますか?

『育休を取った感想としては、思い切ってとってみたらどうかな?と思います。確かに、職種によっては取りにくいかもしれない。「営業職は取りにくいのか?」それなら、「どうすれば取れるのか?」「休んでいる間の売上はどうするのか?」という解決策を考える事が大事だと思います。やってみないとそういった課題も見えてこなかったと思いますし。』

『今回、男性として初めて育休を取ってみて、「新しいことにチャレンジする」「失敗してもいいので、やってみる」という事が大事だと感じました。新しいことに取組む事で、その後の課題が見えてきます。例え失敗に終わったとしても、次の課題をみつける事が大事。これからもチャレンジしていける組織づくりを会社全体で実現していきたいと思います。』

約1ヶ月間の育休・在宅勤務を終え、仕事と家庭の両方において多くの気づきがあったとお話される、新井さんのイキイキとした表情がとても印象的でした。まだまだ、男性が育児休業を取得することは一般的ではないかもしれません。しかし、男性の育児休業取得が、仕事への取組み方や会社の仲間との協力関係を高めるきっかけにもなります。

社員が長期にわたって働き続け、その中でひとりひとりが成長し続ける事。それが、今後の会社の発展には欠かせません。出産など様々なライフイベントを「人生の成長の場」と捉え、お互いにライフイベントに参加できるように協力し合う。そういった社内での取組みは、ひとりひとりの成長や家族の安心、社員がイキイキと働く組織づくりへと繋がります。

働き方改革プロジェクトを通じて、一人ひとりの成長、会社の成長、社員全体の幸せを一体となって考え、取り組み続けているバーテック社。その取組みこそが、7期連続の増収を達成されている理由の1つであり、バーテック社の大きな強みであると感じました。ご協力ありがとうございました。

editor:礒田 翼

■ 株式会社バーテック
大阪府大阪市都島区中野町1丁目4-12
https://www.burrtec.co.jp/
新井 健一郎 様

■ エレメンツ社労士事務所
大阪市中央区内本町1丁目2番6号 成起ビル9階
http://www.elements-sr.jp/
社労士 礒田 翼(いそだ つばさ)

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